3D デザインランプをつくるのに「螺旋 3D 印刷」という独自の 3D 印刷法をつかっています．この方法では基本的には 3Dプリンタがはきだすフィラメントの断面積 (太さ) を一定にしています．しかし，この方法ではうまくいかない場合があるので，隣接するフィラメントとの距離にもとづいてその断面積を変化させる新しい方法 (アルゴリズム) を開発しました．まだ，これまでにつくってきたすべての印刷品がこの方法でうまくつくれるようにはなっていませんが，かなりの部分がすでにおきかえられ，これまでよりうまくつくれるようになりました．

 

これまでの方法

 

螺旋3D印刷ではその名のとおりフィラメントを螺旋状に巻きながら，かたちをつくっていきます．そのため，はきだしたフィラメントはしばらくまえにはきだしたフィラメントと近接します．つまり，それらは接触するかまたは非常にちかい距離にあります (下図参照)．

 

 

つくるものが完全な螺旋形つまり円筒であるなら，それらの近接フィラメント間の距離 d は上図のようにどこでも一定になります．しかし，螺旋 3D 印刷では螺旋を変形させてさまざまなかたちをつくるため，変形によって距離 d が変化します (下の 2 番めの図を参照)．

 

 

このように距離 d が場所によって変化する場合でも，これまでは基本的にフィラメントを一定の速度で 3Dプリンタからはきだしていました．つまり，フィラメントの断面積 s がどこでも同一になるようにしていました．

 

新規開発した方法

 

あらたに開発したアルゴリズムでは，このような変化する距離 d をフィラメントの各部分でもとめて，それにしたがってフィラメントの断面積 s をきめます．螺旋 3D 印刷では基本的にはヘッドの移動速度を加減することによって断面積をきめます．それは，フィラメントのはきだし速度は急速に変化させることがむずかしいからです．フィラメントのはきだし速度は基本的に一定にしています．

ただし，フィラメントのはきだし速度は基本的に一定にしています．そのかわりにヘッドの移動速度を加減することによって断面積をきめます．それは，フィラメントのはきだし速度は急速に変化させることがむずかしいからです．このようにフィラメントを一定速度ではきだすのはこれまでと同様です．

 

フィラメントの断面がどこでもほぼおなじかたちになるようにするには，距離 d からフィラメントの半径 r をもとめて (まずは d = 2r とかんがえてかまいません)，断面積 s が r の n 乗 (1 ≦ n ≦ 2) に比例するようにします．式で書くと s = πrⁿ つまり断面が円のときの断面積にしますが，実際にはすこしつぶれたかたちになります．従来のやりかたでは s は d に依存しないので，r の 0 乗に比例することになります．これらの中間のやりかたも可能です．つまり s が r に比例するようにも，r の 0.5 乗や 1.5 乗に比例するようにもできます．s が r の 2 乗に比例するとき以外は，距離 d によって断面のかたちが変化することになります．また，場合によっては近接するフィラメントが接触しなくなります．

 

ただし，もうすこしやっかいなことがあります．フィラメントを垂直に積むときとほぼ水平にならべるときとでは断面積を変える必要があります (ただし，完全に水平にならべるのは困難です)．垂直に積むときは断面積をおおきくすることができますが，水平にならべるときは断面積をおさえないとフィラメントがもりあがったりして望みのかたちがつくれません．そのため，フィラメントの半径 r を計算するときにそれを考慮して，近接フィラメントが垂直にならぶときは r をおおきめにし (たとえば r = 3d)，水平にならぶときは d をちいさめにします (たとえば r = 2.3d)．