「波合成モデル」によってつくる 3Dデザインランプ
3D デザインランプを印刷するには螺旋3D印刷という方法をつかっていますが,印刷に使用するデータ (G コード) は波合成モデルによってつくります.波合成モデルは正弦波を合成して螺旋 3D 印刷のための形や模様をつくるモデルです.この記事では波合成モデルについて説明します.
螺旋 3D 印刷では 3D CAD やスライサといった通常使用されているソフトウェアを使用せず,独自開発したプログラムによってデザインします.それは,これらのソフトウェアが螺旋 3D 印刷の必要をみたさないからです.3D 印刷のためのデータは通常,3D CAD というソフトウェアをつかってデザイン (設計) し,さらにスライサというソフトウェアをつかってデータ (G コード) に変換します.しかし,螺旋 3D 印刷ではフィラメントの方向をデザインすることが必要です.ところが,従来の 3D 印刷ではフィラメントの方向を問題にしていないので,3D CAD ではそれがデザインできません.そのため,独自のプログラムを使用しているのです.
最初はあたらしいデザインのたびにプログラムを書いていましたが,それではデザインに時間がかかりすぎるので波合成モデルにもとづくインタフェースを開発しました.螺旋 3D 印刷で最初につくった小皿やちいさな花瓶はいまでも販売していますが,当時はこれらをあたらしくデザインするたびに Python 言語によるプログラムをつくっていました.この方法は現在でも「カスタム・デザイン」に使用しています.しかし,それではデザインにおいて本質的でないところに時間をかけることになってしまいます.そこで,デザインできる範囲はせまくなりますが,通常の範囲のデザインをもっと短時間でデザインできる設計インタフェースを開発しました.それが「波合成モデル」にもとづく Web インタフェース 3D 印刷シェード・デザイナです.
3D 印刷シェード・デザイナは表面に模様をえがいた球などのデザインに特化したWebインタフェースです.模様をえがく方法は 3 種類あります.
- 変形 (deformation): 球を水平方向に変形させて模様をつくります (下図(a)).
- 変調 (modulation): フィラメントの断面積を変化させて模様をつくります.断面積を変化させるには印刷時にヘッドの速度を変化させます (下図(b)).
- ヴィブラート (vibrato): 印刷時にヘッドを上下に波うたせて,模様をつくります (下図(c)).
つける模様は波模様である必要はありませんが,波合成モデルではそれを複数の正弦波をかさねあわせに限定することで,統一的にデザインできるようにしています.変形,変調,ヴィブラートのそれぞれについて,複数の正弦波を指定することができます.
波合成モデルの目的は多様な形や模様がつくれるようにすることです.正弦波をかさねあわせることで形や模様をつくっていきます.理論的にはほとんどすべてのかたちがつくれますが,実際にはかさねあわせる波の数がかぎられるので,できない形もあります.また,螺旋 3D 印刷という方法でつくれるかたちはかぎられています.いずれにしても,さまざまな波を自由にかさねあわせることで,さまざまなかたちの波模様がつけられたランプシェードがつくれるようになります. ただし,3D 印刷ではフラクタルのような非線形のかたちがしばしばつかわれていますが,波合成モデルではそういうかたちをつくるのは困難です. しかし,正弦波の合成だけでも多様なかたちをつくることができます.
上記の 3 種類の波のそれぞれに縦方向の波と横方向の波とがあります.これらを下の写真をつかって説明します.横方向の波は波頭が縦にそろっています (下の写真の左上).また,縦方向の波は波頭が横にそろっています (左下). これらを合成するとななめ方向の波 (波頭がななめにそろう波) をつくることができます (右の列). これは凹凸による波ですが,断面積による波でもこれらの方向の波をつくることができます. ただし,凹凸による縦方向の波は振幅がおおきいと球のかたちをなさなくなるし,そうでなくても球の強度をよわめがちです. また,断面積による波も振幅がおおきいとフィラメントのあいだにすきまができてしまうし,フィラメントがあまる場合もでてきます. 断面積を負にできないことはあきらかです. なお,写真の中央の列は縦方向の波と横方向の波をあわせたものと,2 種類のななめ方向の波をあわせたものです.
ヴィブラートによる (ヘッドを上下に波うたせることでできる) 波は,上下のフィラメントに直接影響するので,うまく制御しないと球のかたちがくずれてしまいます.ヘッドが印刷ずみのフィラメントをじゃましないためには横方向の波の振幅をちいさくする必要があります.また,縦方向の波はフィラメントのピッチを緯度によって変化させるので,その振幅は非常にちいさくする必要があります.
縦方向の波の周期は自由に選択することができるが,横方向の波は 1 周したところでもとにもどらなければならない (定在波でなければならない) ので,周期は整数でなければなりません.
なお,この記事の一部は「3 種類の波の自由な合成による 3D らせん印刷」というブログ記事 (外部サイト) にもとづいています.
関連情報
3Dデザインランプ|Dasyn(デイシン)
デイシン (Dasyn) はオリジナルデザインの LED 照明器具「3Dデザインランプ」を製造販売しています.デイシンが独自に開発した「螺旋 (らせん) 3D 印刷法」によって造られた,ガラスではまねできない繊細な形や模様をもつ透明プラスティック製ランプシェード (セード) を使った,様々な表情をもった光の彫刻のような「3Dデザイン電球」や照明器具が,おしゃれに きらめき ます.
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