# 数年前に書いた文章をなおして再録しているので，現在とはややちがう部分もあることをおことわりしておきます．

CAD をつかってランプシェードをデザインするとしたら，通常はその CAD に用意されたツールを駆使して自由にかたちをつくっていくでしょう． しかし，筆者は「シェードを構成するそれぞれの曲線はどこからくるのか?」 とかんがえてしまうので，こういうデザイン法はしっくりきません． いわゆるジェネラティブ・デザイン (generative design) においては，比較的単純なプログラムや数式から，もののかたちが生成されます． かたちは単純な場合もありますが，複雑なかたちであっても，できるだけ単純なプログラムや数式からつくられるほうがよいとかんがえられます． 「偉大なものはすべて単純なり」という思想です．

3D 印刷による透明なランプシェードをつくるとき，筆者は「螺旋 3D 印刷法」をつかっています． 現在，この方法によってオブジェクトをつくるには，そのかたちをいわゆる CAD ではなくて，プログラムによってあたえる必要があります． そうする必要があるのは，透明ランプシェードのようなオブジェクトにおいては，かたちだけでなくて フィラメントをどのようにつみあげていくかによって，その性質 (ランプシェードにおいては光の散乱や陰のできかた) がかわってくるからです． 従来の CAD ではかたちだけしか指定することはできませんから，それをつかうかわりに Python 言語によるプログラムをつかって，かたちとフィラメントのつみあげかたとをあわせて指定します． そのため，かたちについても CAD のような静的なやりかたではなくて，ジェネラティブな (生成的な，したがって動的な) やりかたで指定します．

ジェネラティブ・デザインのためには Processing というプログラミング言語が使用されることが多いのですが，Processing によるプログラミングと同様に，この 3D 印刷用のプログラミングも ジェネラティブ・デザイン向きだということができます． プログラムによってあたえられる比較的かぎられた手続きや比較的少数のパラメタによって，かたちがつくられます． 単純なプログラムや数式から複雑なかたちがつくられるフラクタルのようなかたちもおもしろいのですが，単純なかたちをうまくいかすこともひとつの方法です． これまで球をもとにしたかたちを追究してきましたが，それは，いきなり複雑なかたちを導入するのでなく，まずは球という単純なかたちからはじめたかったからです．